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定年退職後ロンドンで始めた学生生活の日記

二十歳頃に計画しながら実現には至らなかった海外暮らしの夢を、長い会社員生活を終えた後ついに実行に移しました。行先は、本場の英語をもう一度学び直したかったこと、勉強以外にも滞在生活を楽しめる要素に満ちあふれていることなどからロンドンを選び、2009年4月23日から2010年3月25日までほぼ11ヵ月間滞在しました。従ってこの日記はちょうど2年前の出来事をあたかも現在進行形のように書いているものです。

2009年5月13日(水) サッカーと音楽とビールをこよなく愛する人々

6時30分起床。曇りのち雨のち曇り。

英国で人気のあるスポーツの代表と言えばそれは紛れもなくサッカー(Soccer)あるいはフットボール(Football)と呼ばれる球技である。もちろん自分でプレーを楽しむこともできるが、やはりプロスポーツ(の観衆)として生であるいは家庭やパブのTVで見るのを楽しむ人の方が多いだろう。

音楽に関してはクラシック音楽、ミュージカル、ロック、ジャズ、フォークその他あらゆるジャンルにわたって、演奏者も聴衆もそれらをビジネスとして支える人達も含めて世界をリードする国の一つであることは間違いない。

ことビールについては下戸の私に語る資格はないかも知れないが、今日経験したことは決して忘れられない記憶そして知識として残るであろう。

ただし、今ここで書こうとしているのはそれらのすべてを愛して止まない典型的な英国人のことではなく、純粋な日本人青年のことである。

話は今年2月に戻るが、定年後も嘱託として勤務していた会社を最終的に退社する直前、結婚30周年を記念して新婚旅行以来となるパリに家族4人で短い旅行をしたときに、自分だけ一足早く日本を出発してロンドンにやって来た。それは4月から送る学習環境を一度自分の目で見ておきたいと思ったからである。

ICCロンドンオフィスの責任者である深野さんにそのとき初めてお会いしたのであるが、普段ほとんど20歳代前半の若者ばかり相手にされているせいか、会社を定年退職後にやってくる学生にたいへん興味を持っていただいたようで、メールによる訪問のアポの相談からずっと親切にサポートしていただいた。

当日朝10時にオフィスに到着するとすぐにRegent校舎、Wells校舎、Cavendish校舎を中までは入らなかったが一通り案内していただき、EFLプログラムの責任者Charlieにも引き合わせていただいた。実はその段階ではまだUniversityからの正式な入学許可をもらっていなかったので、ビザ申請等の手続に遅れが出ないかとICCの方では心配してくれていたのである。

このときCharlieと会って間もなく彼のサイン入りの許可書が日本に届いたことを考えると、どうもこれが面接みたいな意味合いだったと思われる。と言うのも、本来は現役の学生向けに作成されたプログラムに、講師陣よりも年かさの人間がやって来て本当に1年間続ける気があるのかどうか懸念があったに違いない。

まあ、その時はありのままに留学の動機と期待を述べたので、極めて短い面談ではあったが真意は十分通じたと思っている。

そしてもっと予想外の展開に至ったのは、深野さんから1966年のThe Beatles(ビートルズ)日本公演を見に行ったという話を聞いた瞬間からである。60年代の英国が生んだ世紀のスーパースター、ライブ公演ツアーを中止してスタディオ録音に専念する寸前のワールドツアーの一環として、たった5日間の東京・武道館での公演、後にも先にも計5万人程度しかその生演奏に触れることはできなかった、その貴重な公演に行った人に会ったのはそれが初めてであった。当時大阪の高校生だった身には東京へ行くことさえそう簡単な時代ではなかったのだが、それでもTV実況中継を見てこれは夢じゃないかと思ったことを思い出した。その後は13時10分発のパリ行きユーロスターに乗るべくお暇するまでほとんど当時のブリティッシュロックの話しかしなかったような気がする。

いや一つあった。それは前年9月生の中にぜひ会わせたい学生が二人いる、という話であった。
一人は既に11日に会ってFLATを借りる際の助言をいただいたSEIさん、もう一人は今日夕方に会う約束をしているKOHTAである。KOHTAはSEIさんのような社会人ではないが、大学を卒業した後で自ら資金を貯めて昨年9月から今年夏までの予定で参加しているのだそうだ。深野さんご自身はサッカーにはあんまり詳しくないとのことだったが、KOHTAはとてもサッカーが好きなので、その点で話が合うに違いないと考えたそうだ。

そういう経緯があって17時過ぎにRegent校舎のロビーで待ち合わせたのだが、そもそも60歳代の日本人が校舎内にいるということだけで十分目立つので、初対面同士でも行き違いになる心配はまずない。
すぐに近くの小さな横丁にあるYorkshire Greyというパブに落ち着くや否や話に火がついた。
しかしパブに入ってまずしなければならないのは、飲み物を買うことである。先に下戸だと書いた通り、本当にこれまでパブに行ったことは数えるほどしかなく、それもたいていランチを取るためであった。

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KOHTAは"飯よりビール"と自称するくらいなのでビールには詳しく、その場でビールの選択法を教えてもらった。日本では夏になると、注いだグラスが瞬時に曇るほど冷やした生ビールをごくごくと飲むコマーシャルが民放TVにあふれているが、ここでは全然違う。
KOHTAがこれならきっと大丈夫ですよ!、といって勧めてくれた(銘柄は忘れたが)"ビター"を試してみたところ、ビールを好きになれない理由の一つでもある口に入れたときの刺激がいたって少ない。日本のように極端に冷やさないためか炭酸ガスの刺激、低温で強調されるホップの苦味などが完全に弱められているのかな、と思った。
いや、そうではなく作り方や成分が違うのかも知れない。
いずれにせよビール片手に会話を楽しむ(会話がメインでビールはあくまで脇役)という英国人のパブの楽しみ方を生まれて初めて体験したような気分であった。

いったい何を話したのかと思い起こしてみると、簡単な自己紹介の後、初めのうちはイングランドプレミアリーグ(サッカー)の話、恐らくもしそばに日本人がいて聞き耳を立てていてもついて行けないくらい微に入り細に入り歴代の名選手や過去のワールドカップ、そして現在の各チーム事情等々ほとんど尽きることのない話が弾んだ。お互いにリバプールFCのファンであることも判明したため、あの歴史に残る2005年チャンピオンズリーグでのACミランとの決勝をどこで見ていたか、ということでもゲーム進行をなぞるようにひとしきり話の花が咲いた。

驚いたことに、サッカーだけでなく音楽(ブリティッシュロック)の話についてもほとんど年齢差を感じさせないくらい共通の世界を持っていることがわかって、また話が止まらなくなった。もちろんこちらでの生活について、また大学の授業についても話したのだが、とにかく気が付いたらパブに落ち着いてからまる3時間一瞬の沈黙もないくらい話し続けていてそれでもまだ足りない思いであった。

日本の同世代の友人でさえこれほど共通の話題が尽きない相手はいない、と思うのだが、いやはや衝撃の出会いではあった。

二人でビターをグラス何杯か空にした後(もっとも1対3か4くらいの比率でだが)、また近いうちの再会を約して別れた。こうやってクラスメート以外にも知り合いの輪が広がって行くのは嬉しいことだし、深野さんの見立ては正しかった、ということになる。

後回しになったが、今日の午前の授業は臨時でROBINという講師に代わった。このクラスのレギュラー講師は3名体制だが全員が女性講師というのは他のクラスに比べて珍しいようだ。その意味では今日のように男性講師になると発音とかトピックスに対する興味の置き所等に違いが出てそれはそれで面白いものだ。

ランチは学食でビーフストロガノフ3.35ポンド(約500円:写真なし)。日によってメニューと味に当たり外れがあるが、今日のは美味しかった。

午後の授業も講師2名体制を取っているが、月・火がMARY、水のみTONYである。そんなわけで今日は終日男性講師の日となった。今日はCV(curriculum vitae:履歴書)の実際の書き方についてだったが、先週宿題で自分なりに書いたものをメール送信しておき今日そのプリントアウトに校正を書き加えたものが返却された。なかなか文法的間違いも減らせないが、CVらしい常套的な言い回しとなると、校正を見て初めてなるほど、とわかるものである(自分でいくら考えても思いつかない)。

帰途、今日もまたKings Crossのchop chopでスープそばとドリンクで5ポンド(約750円)。

21時45分帰宅。23時就寝。
  1. 2011/05/13(金) 12:08:21|
  2. 未分類
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  4. | コメント:2
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コメント

もう二年以上も経ったなんて信じられないですね。

仕事の後、東京のなんちゃってパブで一人飲む度にその時の光景を思い出しますよ。

パブとサッカーと音楽と電車さえありゃ成り立つ国

そこに20代のうちになんとか戻るんだ、という思いだけで日々を乗り切る今日この頃です。
  1. URL |
  2. 2011/05/14(土) 07:45:39 |
  3. K #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

そうですね。でも実際には2年も経ったのだという感覚は全然ありません。毎日これを書いているせいかも知れませんがまるで昨日のことのようです。
20代でもう一度住めればどんなに良いでしょうね!!
私も地球の反対側にいつ行っても心から落ち着ける場所があることを再発見したので、今すぐは行けなくてもいつか必ず戻ろうという気持ちでいっぱいです。
  1. URL |
  2. 2011/05/14(土) 09:03:54 |
  3. oldstudentinlondon #-
  4. [ 編集 ]

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Author:oldstudentinlondon
高校時代は生物研究クラブ、大学は理学部生物学科、社会人生活は製薬会社と臨床検査会社、という具合にずっと生命科学の世界にどっぷり浸りきっていたのですが、定年退職が近づくにつれて、これまでとはまったく異なる分野のことを少しでも知りたいと考え、英語、英国文化、芸術等について学ぶことを目的にシニア留学に踏み切りました。
結果として期待以上に充実した時間を送ることができました。真っ先に挙げられるのは、これまでおよそ話す機会もなかったような若い世代の友人達と親しくつき合えたこと、そしてこれまでマスコミ等を通じて間接的にしか知り得なかった国々から来た学生達と話すことを通じてそれらの国に対する自分のイメージが大きく変わったこと、です。やはり海外に住んで改めて日本を見直すということは、年齢に関わりなく極めて意味深いものだと実感しました。
なお、記事中の人名は、知人については本人の承諾を得た場合を除いて仮名を用いています。政治家、アーティスト等広く一般に知られている人については原則として実名を用いています。

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