9時20分起床。曇のち晴のち快晴。
ロンドンを引き払う最後の数日間と機内での睡眠調整の反動かも知れないが、久しぶりに8時間余り熟睡した。飛行機の中だろうがホテルのベッドだろうが、場所を選ばずにどこでも良く眠れるというのは旅をするときには有利な条件と言って良いのだろうか?少なくとも体調を保つためには必須要件だと思う。
このホテルでは無料の朝食サービスがある

ベッドと朝食がセットになっているのだからB&Bと言っても良いかも知れない。しかし朝食メニューは豪華なフル・イングリッシュ・ブレックファストとは比較にならない簡素なものだ。
さて、今日は東京を発つ前にどうしてもしておかなければならないことがある。それは昨年7月に85歳で亡くなった叔父さんの墓参りである。7月初めにフラットを借りて引っ越して間もない頃に、深夜に日本から持参したauの携帯電話が鳴り出して起こされたのだが、それが従兄弟からの訃報の連絡だった。遠くイギリスに住んでいることはごく限られた人にしか伝えていなかったので驚いていたようだが、それよりも遠く離れた外国にいようが携帯電話でリアルタイムに普通に話ができることが我々の世代にはとてもすごいことに感じられる。そうと知らなければすぐ隣の部屋にいるのかと思うくらいクリアに聞こえるのだから・・・。
5人兄弟の4番目だった父親の弟である叔父がまだ医大の学生だった頃、祖母ともどもうちの家族と同居していて、子供の頃にいろんなところへ連れて行ってもらったものだ(中でも初めてパチンコ屋に入ったことは今でも鮮明に記憶している)。
そんなわけで帰国したらすぐに行こうと思っていたので、亡くなった叔父の長男である従兄弟(電話をして来たのは別の従兄弟)に案内してもらったのだ。山手線の大塚駅で待ち合わせをして、池袋経由で所沢まで行き、駅前からタクシーで霊園に向かう。すでに十数年前に亡くなった叔母もここに眠っているのだが、実際に訪れるのは今回が初めてだったので、墓前でしばし子供時代からの長年の思い出を心の中で噛み締めた。
池袋まで戻り、従兄弟と西武池袋店の食堂街でうな重のランチを食べながら何年ぶりかの積もる話をして、そこで別れた。再び山手線で東京駅に戻り、17時11分発のぞみ241号で19時31分京都駅着。20時過ぎについに11ヵ月ぶりに無事帰宅した。
完
<あとがき>
ロンドンで実際に過ごした時間は終わりに近づくほど早くなったように感じたものだが、こうして2年遅れの日記を書き連ねていく作業も予めトータルの日数がわかっていたとは言え、最初の頃はその行末が途方もない先に思えたにも関わらず、終わりに近づくにつれ、ああもうすぐ終わりか!と名残り惜しい気分になって来た。振り返ってみると始めの2ヵ月間くらいは続けるのが苦しいときもあったが、その後は完全に日課として、旅行等で遅れることはあったが、最後まで途切れることなく書き終えることができた。
大学を卒業してから送った30数年間の会社員生活の間にはもちろん公私にわたってさまざまな苦楽もあったが、振り返ってみればある種の型にはまった、と言うのか、一つの規範の中で過ごした、と言うのかわからないが、後から見れば他の大多数の皆と同じ平均的人生を送っていたのだと思う。
しかしここに記してきた2009年4月から2010年3月までのできごとの数々は、それほど多くの人が経験し得たことではないだろうし、何よりも自分にとってはそれまでの人生とまったく違う世界に飛び込んでいた11ヵ月間だと思える。だから帰国してから時間とともに次第に薄れて行くに違いない記憶に留めて置くのではなく、いつでももう一度振り返って見直すことができるように文章化しておくことが必要だと痛切に感じたのだ。
昔の海外出張ではできる限り映像記録を持って帰るぞ!と勢い込んで36枚撮りの写真フィルムをかさばるのも顧みず10本も20本も大切に持参したものだが、今やデジタル時代の恩恵でそんなに肩に力を入れなくても、常にポケットに軽量デジカメを持ち歩き、歩いた道や見かけたものを迷わず気楽に記録代わりという感覚で大量に保存して来ることができた。その数は1万数千枚!今度はこれをどうやって整理すれば良いのかという問題が生じたが、1日単位で見直すことによって何とか整理はついた。もちろん日によって枚数にバラつきがあり、ゼロの日もあれば100枚をはるかに超える日もある。それを1枚ずつ見直していると、その日の空気や気分まで甦って来るのだった。写真の持つ力、情報量は実に大きいと思った。
見終わった後には、とても全部を掲載することはできないのでどれを選択するかという作業があり、それでその日書く大体のストーリーが頭の中にでき上がる。写真のサイズがカメラ撮影時の設定では大きすぎるためブログの機能を使って縮小してはアップロード~ダウンロードを繰り返し、文章を書きながら写真の並べ替えも行う、という結構労力と時間を要する作業を339日間にわたって毎日続けて来たことになる。
本当のことを言えば、実はロンドンに行くと同時にリアルタイムでブログを書いて家族や友人に毎日の報告をしようかな、と考えていたのだが、2、3日でこれは無理だと断念したのだ。毎日が新しい経験の連続で、本分である勉強もしなければいけない、食事の時間も取らないといけない、友人付き合いもある、等々で毎日ブログを書く時間など到底取れるわけはなかった。その点からも2周回遅れながら日記を書いて行くことは、やり残したことの完結という意味合いも兼ねていた。
何はともあれ2年前の実体験を再度、今度は頭の中で追体験することができたのだから、体験の記憶の強化につながったことは間違いない。これでもう思い残すことなく、次は何か新しいこと(Something new)に取りかかる時期が来た、と思う。
最後に海外留学の最大の収穫は何かと問われれば、今までまったく接点のなかった多くの国の人達と出会えて直に話ができたこと、そのことでお互いにこんなことも知らなかったのかと思えることを少しでも発見できたことを挙げる。最近では、海外留学志望者が減って来ているそうだが、もし自分が若いときにこういう経験ができていれば、その後の人生にどれだけ役立ったか計り知れないし、若いときではなくてもマスコミやインターネット等を通じての限られた間接的な情報ではなく、可能な限り自分で見聞きすることの大切さを軽視してはいけないと思う。
最低限の資金と気力さえあれば、リタイアして自由になる時間を得た60歳代の方々にもお薦めしたいし、そういうニーズに向けたプログラムを提供して機会を増やす支援団体の企業努力も必要であろう。もちろん何よりも大切なことは誰かが作ったレールに漫然とただ乗りして良しとするのではなく、常に何が最善かを自分で考えて行動する心構えである。
今回、図らずもいくつかの授業でクラスメートとしておつきあいいただいた日本の学生、若者たちの前向きの考え方、行動力にも感心した。彼らがいる限り日本の将来は安心だと思う。内向き指向だとか何だとか言われながらいつの時代にも世界に目を向け、自分の将来をきっちり描いて実現に向けて行動する若い日本人を知ることができたことがもう一つの大きな収穫だった。
<おまけ>
さてさて、今日で終わりと言いながら未練がましいのですが、帰国から約2ヵ月後の2010年5月20日から6月2日までの2週間にわたって今度は旅行者として渡英し、スコットランドの北端からイングランド東部、西部の各地を巡る旅をしました。こちらもちょうど2年後となる本年5月の同じ日付からこのブログの一部として(続編として)書いてみようか、と考えています。少し時間が開くので忘れてしまうことと思いますが、もし思い出してご笑覧いただければ幸いです。
- 2012/03/27(火) 23:58:19|
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長期にわたってお疲れさまでした。
読む側としては楽しくてもっと続いて欲しいのですが、まあひと休みして第二弾か新機軸に期待して待っています。
ではまた。
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- 2012/03/28(水) 03:54:37 |
- 小梨治 #-
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ご無事で完結、おめでとうございます。
すごいなあ。
このブログ、万が一、サーバーが落ちてもいいように、と、複製をとっていたけど、こっちも完結です。
続編、始まったら、また続けるかも。
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- 2012/03/28(水) 08:37:05 |
- take_it_easy #XbnZBJT2
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コメントありがとうございます。結構ヘビーワークでしたが、終わると急に手持ち無沙汰になりそうです^^
でもやることがなくて困るなんてことはないので、次の目標に向かって間もなく始動する予定です。
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- 2012/03/28(水) 10:39:43 |
- oldstudentinlondon #-
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毎日の日課がなくなると手持ち無沙汰になるでしょうか?いやいっぱいやりたいことがあるので頑張ります。
でも当分の間、少しは早く寝られそうです。
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- 2012/03/28(水) 10:41:58 |
- oldstudentinlondon #-
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